【結論】インプラント手術中の痛みはほとんどありません
インプラント治療は外科的な処置であるため、全く無痛というわけにはいきませんが、親知らずの抜歯などの手術と比較した場合、痛みは非常に少ないです,。実際に、治療を受けた患者さんの中には、痛みをほとんど訴えない方もいらっしゃいます。
なぜ痛くないのか?局所麻酔と効き目の仕組み
手術中の痛みを感じないようにするためには、麻酔をしっかりと効かせることが重要です。麻酔薬は、神経伝達におけるナトリウムとカリウムのイオンチャンネルをブロックし、痛みの信号が脳に伝わるのを防ぐ仕組みを持っています。
しかし、麻酔薬が効くためには、組織が「中性」である必要があります。もし炎症があって組織が「酸性(pHが低い状態)」になっていると、麻酔薬がイオン型(効く状態)になれず、効果を発揮しません,。そのため、口腔外科専門医は、手術前に口の中のバイ菌を減らし、歯肉の炎症を取り除く「消炎処置」を徹底してから手術を行います。炎症のない状態で麻酔を行えば、しっかりと効き目を発揮し、手術中の痛みを抑えることができます。
手術中に感じるのは「痛み」ではなく「振動」と「音」
術後の痛みはいつまで続く?時系列で見る痛みのピークと経過
麻酔が切れた直後〜当日の夜(痛みのピーク)
術後の痛み(術後疼痛)は、手術中に痛みを感じたかどうかが大きく影響します。手術中に痛みを感じると「サブスタンスP」という物質が放出され、神経節に痛みの記憶が残るため、術後も痛みが続きやすくなります,。 そのため、痛みのピークを抑える工夫として、麻酔が切れる前に痛み止めを服用する「先制鎮痛」が有効です。痛くなる前に薬を飲むことで、発痛物質(プロスタグランジンなど)の発生を抑制し、術後の痛みをコントロールできます。
術後2日〜3日目(腫れと鈍痛)
痛みや腫れの原因の一つに、細菌感染(化膿)があります,。炎症が起きると血管が拡張して血流が増加し、バイ菌と戦うための白血球などが集まりますが、その結果として組織が水浸しになり、腫れや痛みが生じます。 しかし、インプラント手術は滅菌された綺麗なものを入れる処置であり、事前に口の中を清潔にしてから行うため、術後に顔がパンパンに晴れるようなことは非常に少ないです。
1週間〜10日後(抜糸前後の状態)
通常の手術では縫合が必要になることがありますが、条件が整えば「ノンフラップサージェリー(歯茎を切らない手術)」が可能であり、その場合は縫う必要がないため、手術時間も短く、痛みや腫れも極めて少なくなります,。
【比較】インプラントの痛みは「親知らずの抜歯」より軽い?
はい、多くの場合、親知らずの抜歯よりも痛みは圧倒的に少ないです。親知らずの抜歯は、半分埋まっていたり周囲にバイ菌がいたりする「汚いもの」を取り出す処置であるため、術後に感染が起こりやすく痛みや腫れが出やすい傾向があります,。一方、インプラントは綺麗な場所に滅菌されたものを入れるため、感染のリスクが低く、痛みも出にくいのです。
どうしても「怖い」人へ。痛みを極限まで減らす3つの対策
「インプラントは怖い」と感じている方の多くは、手術中や術後の「痛み」を不安に思われているのではないでしょうか。当院では、その不安を解消するために、医学的根拠に基づいた「痛みを徹底的に抑える3つの対策」を行っています。
①麻酔が確実に効く環境を作る
手術中の無痛状態を保つためには麻酔が欠かせませんが、実は「麻酔が効きにくい状態」というものがあります。それは、歯茎や骨の周りに「炎症」があるケースです。
なぜ麻酔が効かないのか 炎症が起きている組織は酸性(pHが低い状態)に傾いています。すると麻酔薬が化学的にうまく作用(イオン化)できず、十分な効果を発揮できなくなってしまうのです。「痛い時に治療をしても麻酔が効かなかった」という経験は、これが原因です。
当院の対策
当院では、いきなり手術を行うことはありません。必ず事前に、お口の中の細菌を減らし、歯茎の炎症を完全に取り除いてから手術に臨みます。組織を健康な「中性」の状態に戻すことで、麻酔を深くまで確実に効かせ、手術中の痛みをシャットアウトします。
②「歯茎を切らない・縫わない」手術(フルガイド・フラップレス)
条件が整った方に限られますが、当院ではメスで歯茎をめくらずに行う「ノンフラップサージェリー(フラップレス手術)」を採用しています。
どのような手術か
「フルガイド」と呼ばれる精密なマウスピース型の装置を作製し、歯茎の上から直接インプラントを入れます。ガイドが設計図通りに位置と深さをミリ単位で制御するため、骨を直接見るために歯茎を大きく切り開く必要がありません。
痛くない理由
歯茎を切開したり剥離したりせず、縫合も行わないため、傷口は最小限で済みます。そのため、術後の腫れや痛みも驚くほど抑えられ、手術時間自体も15〜20分程度と短時間で終了します。
③痛みの記憶を作らせない「先制鎮痛」
手術が終わった後の痛みを抑えるために、当院では「痛くなる前」に痛み止めを飲むという管理を徹底しています。
痛みは「記憶」される
手術中や術後に強い痛みを感じてしまうと、神経伝達物質(サブスタンスP)が発生し、神経がその痛みを「記憶」してしまいます。これが後の痛みへの過敏さにつながります。
当院の対策
麻酔が完全に切れてしまう「前」に、痛み止めを服用していただきます。痛み物質(プロスタグランジンなど)が発生する前にブロックすることで、術後の不快感を最小限に抑えます。また、痛みが強く出そうな場合には、作用機序の異なる2種類の痛み止め(ロキソニンとカロナールなど)を併用し、強力に痛みを抑え込みます。
痛みが長引く場合は要注意!正常な痛みと異常な痛みの見分け方
処方された痛み止めが効かない場合
通常、インプラント単体の埋入であれば、痛み止めが必要になるほどの痛みが出ることは稀で、実際に翌日の消毒時に痛みを訴える人は年に1回あるかないかというレベルです。しかし、骨が足りずに「骨造成(骨の移植)」を行った場合は、傷が大きくなるため痛みが出ることが多くなります,。
しびれや麻痺が残っている場合
神経損傷などのトラブルを回避し、安全に手術を行うためには、CTによる診断とガイドオペの使用が有効であると考えられます。
インプラント周囲炎による痛み
術後に歯が磨けなくなり口の中のバイ菌が増えると、感染(化膿)して痛みが出る原因になります。インプラント周囲炎の有病率は約20%、その前段階の粘膜炎は約50%存在するというデータがあります。術後もいつも通り歯磨きができるよう指導を受け、清潔を保つことが痛みの予防につながります,。
痛みの少ないインプラント治療を受けるための歯科医院選び
口腔外科専門医や麻酔科医が在籍しているか
インプラント専門医は「インプラントを上手に入れる専門家」ですが、口腔外科専門医は「インプラントを含めた手術全般の専門家」です,。口腔外科医は、手術中の出血などのトラブル対応や、術後の疼痛管理、消炎処置(炎症を抑える処置)の重要性を熟知しており、手術に対する知識と技術の幅が広い傾向があります,。
CTによる精密診断とサージカルガイドの使用有無
痛みの少ない「ノンフラップサージェリー」や安全な手術を行うためには、CTと口腔内スキャナーによる三次元的なシミュレーションが不可欠です,。さらに、その設計図通りにインプラントを埋入するための「サージカルガイド(フルガイド)」を使用している病院を選ぶことが重要です,。ドリルだけでなくインプラントの埋入までガイドを使用する「フルガイド」の方が、より正確で安全です,。
まとめ:インプラントの痛みはコントロール可能です
インプラント手術は、術前の消炎処置、適切な麻酔、そして先制鎮痛などの工夫により、痛みをコントロールすることが可能です,。また、ガイドを使用した手術や、口腔外科的な知識に基づく管理を行うことで、術後の腫れや痛みも最小限に抑えることができます。
